もうすぐ箱根駅伝。チームエントリーも決まり、緊張感が高まる時期になりました。精神的にしんどいのは選手だけでなく、監督も同じです。選手の調子を見極めて区間配置をする大事な仕事、区間エントリーが控えています。
今回は、監督に注目して箱根駅伝を楽しむポイントを紹介します。
第100回箱根駅伝出場校 監督一覧
シード校(順番は前回大会の順位)
- 駒澤大学 藤田 敦史
- 中央大学 藤原 正和
- 青山学院大学 原 晋
- 國學院大学 前田 康弘
- 順天堂大学 長門 俊介
- 早稲田大学 花田 勝彦
- 法政大学 坪田 智夫
- 創価大学 榎木 和貴
- 城西大学 櫛部 静二
- 東洋大学 酒井 俊幸
予選会から
- 大東文化大学 真名子 圭
- 明治大学 山本 豪
- 帝京大学 中野 孝行
- 日本体育大学 玉城 良二
- 日本大学 新 雅弘
- 立教大学 原田 昭夫
- 神奈川大学 大後 栄治
- 国士舘大学 小川 博之
- 中央学院大 川崎 勇二
- 東海大学 両角 速
- 東京農業大学 小指 徹
- 駿河台大学 徳本 一善
- 山梨学院大 飯島 理彰
箱根駅伝監督に注目して観戦!
ここでは箱根駅伝の監督の役割を紹介します。
チームエントリー
チームエントリーとは箱根駅伝に出場する選手を登録することです。例年12月10日あたりに各チーム16名の選手がエントリーされます。
このチームエントリーが監督を悩ませます。
入学時から頑張ってきた4年生の思いを大切にしたり、来年以降を見据えて下級生にチャンスを与えたり、様々な思いが交錯するからです。12月上旬は、当落線上にいる学生(16番目と17番)にとっては精神的にしんどい時期です。
そして、チームエントリーの段階でほとんどの学生に箱根駅伝を走るチャンスが無くなることが決定します。
そんな決断をしなければならない監督の仕事は重責です。
第100回箱根駅伝2024優勝候補を予想 駒澤大学3冠連覇を阻止するのは?
区間エントリー
区間エントリーはチームエントリーをした16名から「誰が、何区を走るか」(10人)と「補欠」(6人)を決め、登録することです。例年、12月29日あたりに区間エントリーがあります。ここでは優勝争い・シード権争いをするために区間配置を監督が考えます。
区間配置のポイントはいくつかあります。
区間エントリーのポイント
- 序盤の流れをどのように作るか
- 1区と花の2区は1セット
- エースを何区に投入するか
- 山登りの5区、山下りの6区は
- 復路にも戦力を残すには
- 当日エントリー変更 など
箱根駅伝の場合、集団走が得意な選手は往路、単独走が得意な選手は復路。暑さに強い選手は往路ならば3・4区、復路ならば8・9・10区に配置するなど、選手の適性を見極める必要もあります。また、箱根駅伝は各区間に特徴があります。わかりやすいのが5区の山登りと6区の山下りです。坂の適性を見極めることも箱根駅伝では重要です。
このように各校の監督は様々なことを総合的に判断して区間配置をします。スタート前の監督たちのかけ引きも箱根駅伝の見どころの一つです。
声かけ
朝日新聞デジタルより
レースがスタートしたら監督は運営管理車に乗り、選手が走る様子を見守ります。そして、声をかけてよい所でアドバイスをしたり、励ましたりします。
声をかけてよい地点
1km、3km、5km、10km、15km、残り3km、残り1km地点
この地点で1分間の声かけがルールとして定められているようです。
近年の箱根駅伝では、監督の声かけに注目が集まるようになりました。テレビ中継でも監督の声を聞くために、実況と解説が沈黙する場面があるくらいです。
監督の声かけで有名なのが駒澤大学・大八木弘明総監督です。
昨年度で監督を勇退したため、運営管理車からの声かけは見られませんが、「男だろ!」という檄が大八木監督の代名詞でした。
個人的には、ガッツポーズした選手に対して「何がガッツポーズだ!トップ走ってるわけでもないのに」と運営管理車で激怒していた姿が印象的です。
また、帝京大学・中野孝行監督の声かけが個人的には好きです。「入ってきてくれて(入学してくれて)ありがとな。」「お前はまだまだできるんだぞ。」などの言葉には選手への愛を感じます。私が駅伝の指導をしていた時、参考にさせていただきました。
選手として活躍した箱根駅伝監督
箱根駅伝の楽しみ方の一つに監督の采配や声かけが注目されますが、ここでは別の視点での楽しみ方を紹介します。それは、「選手として箱根駅伝のスターだった監督たち」です。ここからは私(マー)の好みがダダもれですが、お付き合いください。
藤田敦史(駒澤大学監督)
今年度から駒澤大学の監督になった藤田敦史は、世界レベルの選手でした。
駒澤大学在学時の4年間全ての箱根駅伝出場。4年時の第75回箱根駅伝では当時の第4区区間記録(箱根駅伝公式サイトより動画あり)を更新しました。この時の駒澤大学は箱根駅伝初優勝を目指すチームで、往路優勝をしましたが、総合では2位でした。
藤田監督が卒業した翌年の第76回箱根駅伝で駒澤大学は初優勝を果たします(この時の駒澤大学のキャプテンが國學院大学の前田監督です)。箱根駅伝初優勝後の大八木弘明総監督と藤田監督とのやり取り(箱根駅伝公式サイトより動画あり)には感動しました。
藤田監督は駒澤大学が強くなる時の中心選手でした。
最後の箱根駅伝から2か月後のびわ湖毎日マラソンで、瀬古利彦がもっていたマラソン学生記録を破り、セビリア世界陸上男子マラソンに出場し、6位入賞を果たしました。
大学在学中にマラソンを走り、日の丸を背負うことが当時の私には衝撃でした。今、大学生でマラソンを舞台に世界で戦える選手はいません(トラック競技はいますが…)。
卒業後は富士通へと進み、2000年福岡国際マラソンではオリンピックチャンピオン・アベラ選手に勝ち、当時の男子マラソン日本記録(2時間06分51秒)で優勝しました。
高校生だった私をさらに惹きつけた藤田監督の魅力は、「圧倒的な練習量」です。記憶では1か月の走行距離が多い時は1300kmだったと思います。毎日40km走る感じですね。まさしく練習の虫でした。
そして、当時駒澤大学コーチとして指導していた大八木弘明総監督との師弟関係が今でも続いているのが嬉しいです。
今大会は2年連続3冠の偉業を成し遂げた監督として名を残すか注目です。
藤原正和(中央大学監督)
毎日新聞より
藤原監督を象徴するレースは3つ。
1つ目は第77回箱根駅伝(2001年)5区山登りでの逆転往路優勝(箱根駅伝公式サイトより動画あり)です。順天堂大学(奥田選手)・法政大学(大村選手)との三つ巴は今見ても興奮します。16kmあたりで3人が一直線に並び、ものすごい風の中を走るシーンが、これぞ箱根駅伝という感じです。そして、往路優勝をかけたデッドヒート。歴代の箱根駅伝で一番好きなシーンです。
ちなみに、この往路優勝は中央大学にとって37年ぶりでした。
2つ目は第79回箱根駅伝(2003年)2区(箱根駅伝公式サイトより動画あり)で区間賞を獲得したレースです。駒澤大学(松下選手)・山梨学院大学(モカンバ選手)・日本大学(清水将選手)とのエース対決は見応えがありました。とにかくレース運びが上手で、ラスト3kmの突き放しがすごいです。
3つ目は2003年びわ湖マラソンで初マラソン日本記録(2時間08分12秒)を樹立したレースです。レースの後半から少しずつ存在感を見せるレース運びは見事でした。箱根の2か月後でも、練習を積めばマラソンが可能であることを証明しました。
2016年に中央大学の監督に就任し、シード権を逃し続けていた同校を復活させました。
中央大学の復権にはいつも藤原正和監督が関わっているように思います。
世界を知っている監督なので、今後の中央大学の選手(特に吉居大和選手ら)に注目していきたいですね。
徳本一善(駿河台大学監督)
中国新聞デジタルより
徳本監督と言えば「サングラス・茶髪」です。当時は法政大学の自由さを象徴していました。
私の中では「スピードスター」という印象が強いです。もともとは800m・1500mといった中距離に力を入れていましたが、大学1年時に箱根駅伝に出場したことで練習に対する意識が変わったそうです。その後は大学長距離界のエースへと成長しました。
当時の雑誌に「800mからハーフまで」という言葉があり、ミドルからロングまでできることがかっこいいと思っていました(「爆走王」という言葉もかっこよかったです)。腕振りや腰の位置などを真似して走っていました。
4年時の箱根駅伝2区で途中棄権をした姿(箱根駅伝公式サイトより動画あり)は、箱根駅伝のたびに当時のVTRが流れるので記憶している人も多いのではないでしょうか。ただ、ものすごいランナーであったことも知って欲しいです。
監督として箱根路に戻ってきた時は感動しました。駿河台大学がシード権を獲得することを期待しています。
いかがでしたか?
箱根駅伝の監督はすごい選手だった人ばかりです。早稲田大学の花田監督はオリンピックランナーで、上武大学の箱根駅伝初出場時の監督でした。また、法政大学の坪田監督は徳本監督と共にオレンジ旋風を巻き起こし、ニューイヤー駅伝では区間賞男でした。
逆に、選手としては花開かず、指導者として才能を発揮させた監督もいます(代表的なのは青山学院大学の原晋監督)。
箱根駅伝の監督に注目すると、箱根駅伝を楽しむポイントが増えます。ぜひ、監督にも注目して箱根駅伝を観戦してみてください。
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