第107回日本選手権10000mは、従来の日本記録を3人が更新、自己ベスト更新が9人とハイレベルなレースになりました。とても熱い熱い戦いでした。
今回の記事は、第107回日本選手権10000mの結果と感想をまとめました。
第107回日本選手権10000mの結果
写真は月陸オンラインより引用
NR=National Record=日本記録
CR=Championship Record=大会記録
PB=Personal Best=自己ベスト記録
- 塩尻 和也 富士通 27:09.80 NR,CR,PB
- 太田 智樹 トヨタ自動車 27:12.53 NR,CR,PB
- 相澤 晃 旭化成 27:13.04 NR,CR,PB
- 田澤 廉 トヨタ自動車 27:22.31 PB
- 小林 歩 NTT西日本 27:28.13 PB
- 大川 歩夢 プレス工業 27:45.55 PB
- 難波 天 トーエネック 27:46.66 PB
- 田村 友佑 黒崎播磨 27:46.99
- 菊地 駿弥 中国電力 27:47.76 PB
- 清水 歓太 SUBARU 27:50.32
- 太田 直希 ヤクルト 27:52.10 PB
- 市田 孝 旭化成 27:57.08
- 池田 耀平 Kao 28:09.76
- 大石 港与 トヨタ自動車 28:10.50
- 今江 勇人 GMOインターネット 28:14.07
- 伊藤 達彦 Honda 28:32.85
- 大池 達也 トヨタ紡織 28:34.07
- 服部 弾馬 NTT西日本 28:34.55
- 服部 大暉 トヨタ紡織 28:38.22
- 横田 玖磨 トヨタ自動車九州 28:38.27
- 森山 真伍 YKK 28:43.88
- 北﨑 拓矢 NTT西日本 28:51.79
- 清水 颯大 大塚製薬 29:26.86
- 梶原 有高 コモディイイダ DNF
シトニック キプロノ 黒崎播磨 27:12.27 OP(オープン参加)
松枝 博輝 富士通 DNS(棄権)
注目選手の結果
伊藤達彦(Honda) 28分32秒85
序盤は先頭集団の前方で走るも、4000m付近からペースダウン。持ち味である粘りの走りが見られませんでした。ケガにより、しっかりと練習が積めなかったようです。
田澤廉(トヨタ自動車) 27分22秒31
8000m付近まで先頭集団に食らいつくも脱落。しかし、粘りを見せて自己ベスト更新。アメリカ・アルバカーキで共に練習したチームメートの太田智樹との並走は感動的でした。海外での連戦が続いた今シーズンの経験を今後に生かしてほしいです。
相澤晃(旭化成) 27分13秒04
15カ月ぶりの10000mでしたが、自身のもつ日本新記録&自己ベストを更新。順位的には3番目ですが見事に復活しました。さすがです。もう一度鍛え直して26分台にチャレンジしてほしいですが、マラソン転向にも期待しています。
惜しくも2位、太田智樹(トヨタ自動車) 27分12秒53
トヨタ自動車のエースというレースを見せました。早稲田大学時代から有名でしたが、今は日本代表にもなる力を付けました。
今年のニューイヤー駅伝第3区の区間賞にも驚かされましたが、今回の10000mにも驚かされました。
ラスト100mで同年齢の相澤晃に競り勝ち、これからが楽しみな選手です。
日本新記録、塩尻和也(富士通) 27分09秒80
私の塩尻和也の印象は、「オリンピアンとして箱根駅伝出場」と「3000m障害の選手」です。
順天堂大学2年時にリオ五輪に3000m障害で出場。オリンピアンとして箱根駅伝に出場した印象がとても強いです。4年時の第96回箱根駅伝第2区で当時の日本人最速記録1時間06分45秒で走った姿も印象に残っています。そして、私(マー)と同郷の選手なので、以前から興味のある選手でした。
今シーズンは主戦場の3000m障害ではなく、平地の5000m・10000mに注力。5月には日本選手権5000mで優勝し、その流れで今大会の10000m日本新記録。本来ある力をさらに開花させ、27分台一桁の記録を作りました。
残り1000mのロングスパートは見事でしたが、それを可能にした位置取りが素晴らしかったです。先頭集団の前方に行かず、常に先頭集団の真ん中あたりで冷静にレースを進め、余裕をもって走っていたように思います。
(逆にトヨタ自動車の太田と田澤は先頭集団の前方でレースを進め、最後に足が残っていない感じでした。ただ、この2人の積極性があったからこその好レースです。)
冷静なレース運びとスパートのタイミングがハマった会心のレースでした。ゴール後の笑顔には、まだまだ余裕があり、さらなる記録更新(27分切り)が期待できます。
今後の期待 10000m26分台・マラソン2時間3分台へ
今回の日本選手権10000m、胸と目頭が熱くなるレースでした。選手が切磋琢磨し、10000m26分台が現実味を帯びてきたからです。
私が学生の頃は、10000m27分台は文句なしのスピードランナーでしたが、今現在はそれがベースになりつつあります。箱根駅伝を走る学生ランナーからも、27分台が毎年出るようになりました。
日本長距離界はまさに変革期を迎えています。ここ数年で10000m・マラソンの日本記録(もちろん学生記録や初マラソン記録も)が何度も塗り替えられてきました。
それは塩尻和也や田澤廉のように学生の時から世界で活躍したり、世界を見据えて練習をする学生ランナーが増えたりしたことが影響しています。また、実業団(社会人)のレベルも向上しました。そのため、実業団のチーム内競争が激しく、高い質の練習ができる環境があり、日本長距離界全体のレベルを上げています。
近いうちに10000m26分台やマラソン2時間3分台(現在の日本記録は鈴木健吾の2時間04分56秒)が生まれるのではと私は思っています。
来年2024年はパリ五輪を控えています。今回の日本選手権でパリ五輪の参加標準記録(27分00秒00)を突破した選手はいませんでした。当分の間、10000mは27分切りがターゲットになります。27分切りは大きな壁でありますが、一人がその壁を突破すると立て続けに突破する選手が出てくるのが陸上競技です。
そして、10000mで培ったスピードをマラソンにつなげることができれば、2時間3分台も見えてきます。これからが本当に楽しみです。
目先の楽しみとしては、3週間後のニューイヤー駅伝。熱戦を期待しています!
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