今年の夏に開催されるパリオリンピック。
男子マラソンには、小山直城、赤﨑暁、大迫傑の3選手が日本代表として走ります。そして、オリンピック男子マラソン2連覇中のキプチョゲ選手はどんな走りを見せるのか?
オリンピック史上最大の難コースと評される真夏のパリを制するのは?
今回はパリオリンピック男子マラソンのメダル候補や見どころを紹介していきます。
※本記事は2024年5月11日現在の情報をもとに作成しています。それ以降の情報は随時追記していきませす。
パリオリンピックマラソンの日程
男子 8月10日(土)
女子 8月11日(日)
オリンピックの最後は男子マラソンでしたが、今回は女子マラソンが最後のオリンピック種目です。
パリオリンピックのマラソンコース
引用:『パリマラソンは起伏多い難コース 五輪、ベルサイユ含む数々の名所』TEAM JAPAN
後述しますが、「オリンピック史上最大の難コース」と言われています。
エッフェル塔やベルサイユ宮殿を観光するならよいのですが、走るとなると・・・です。
パリオリンピック男子マラソンの日本代表選手
小山直城(Honda)
- マラソン戦績 6戦2勝
- マラソン 2時間06分33秒
- ハーフ 1時間01分08秒
- 10000m27分55秒16
大雨が降るMGCで優勝した小山選手。
直近3レースで2勝と勝負強さがあります。ゴールドコーストマラソンという海外レース、MGCという一発勝負のレースを制した経験がオリンピックのレースにプラスになりそうです。
小山選手は他のランナーの表情やフォームを冷静に観察をして、スパートの仕掛け所を探ります。そして、「ここ!」という所でスパート。
入念にコースを試走して、レース展開をイメージしているからこそできる高等なテクニックです。パリオリンピックでも冷静なレース運びとスパートに注目です。
今年の大阪マラソン2024では2時間06分33秒の自己ベストを記録し、着実にレベルアップをしており、「勝負強さ」に加えて「速さ」にも磨きがかかってきました。
大阪マラソン2024のエントリーが決定!コースや注目選手の見どころは?
赤﨑暁(九電工)
- マラソン戦績 3戦全て2時間09分台
- マラソン 2時間09分01秒
- ハーフ 1時間01分46秒
- 10000m 27分43秒84
大迫傑選手、川内優輝選手の実力者を最後に振り切ってMGC2位でオリンピック出場を決めた赤﨑選手。
初マラソンからの3レース全てサブテン(2時間10分以内)を記録しており、今年2月の青梅マラソン男子30kmでは1時間29分46秒で優勝しました。5月の10000m日本選手権では27分43秒84の自己ベストを更新。
10000m27分を半年で2回記録し、スピードに磨きをかける独自のマラソン調整法でパリオリンピックに挑みます。
一般的にはマラソン選手は「距離を踏む練習」が中心です。しかし、オリンピック3ヶ月前に10000mに出場してスピードを鍛えるアプローチは独特です。
このアプローチが功を奏すか注目です。
大迫傑(Nike )
- マラソン戦績 10戦中2戦で日本記録更新
- マラソン 2時間05分29秒
- ハーフ 1時間01分01秒
- 10000m 27分36秒93
東京オリンピックに次ぐ2大会連続オリンピック出場。
東京オリンピックでは6位入賞とメダルまであとわずかでした。レース後に見せた涙に、私(マー)ももらい泣きしました。一度は引退を宣言しましたが復帰。
2023年の東京マラソンでは2時間06分13秒、MGCでは3位に入りました。
アメリカへ武者修行をし、男子マラソンの歴史を動かし続けたフロンティアは33歳(5月23日が誕生日)。パリオリンピックが悲願のメダル獲得へのラストチャレンジになりそうです。
意外にもマラソンでの優勝が無い大迫選手。パリオリンピックではうれし涙となる快走を期待しています。
パリオリンピック男子マラソンの有力選手
ここからは、海外勢の有力選手を紹介します。
マラソン王国であるケニアとエチオピアの選手が有力です。
ケニア代表:エリウド・キプチョゲ
オリンピック2連覇中。
自己ベストは2時間01分09秒で元世界記録保持者。
39歳の「走る哲学者」はパリオリンピックでオリンピック3連覇を目指します。
東京マラソン2024では途中でペースダウンしながらも2時間06分50秒で走り切りました。全盛期ほどの走りは期待できませんが、昨年のベルリンマラソンでは2時間02分42秒で優勝しており、金メダル最有力です。
東京マラソン2024の見どころと記録更新が期待できる注目選手
ケニア代表:アレクサンダー・ムティソ
日本のNDソフトに所属しているムティソ選手。元日のニューイヤー駅伝でも活躍しています。
ハーフマラソン57分59秒の自己ベストをもつスピードランナー。マラソンでは、昨年のバレンシアマラソンで2時間03分11秒の自己ベストを記録し、今年のロンドンマラソンではベケレ選手(エチオピア)を振り切って2時間04分01秒で優勝しました。
この優勝がケニア代表選出の決め手になったようです。
伸び盛りで、スピードのあるランナー。私は今大会のダークホースになると見ています。ラスト勝負になったら一番強いと思います。
ケニア代表:ベンソン・キプルト
東京マラソン2024で世界歴代5位の2時間2分16秒のコースレコードを記録して優勝。
このレースを記憶している方も多いのではないでしょうか。東京マラソンを制し、ボストン、シカゴと合わせてワールドマラソンメジャーを3つ制覇したことになります。海外レースの勝ち方を知っている「勝負強さ」がキプルト選手にはあります。
エチオピア代表:レンマ、ゲレタ、ベケレ
シサイ・レンマ選手は世界歴代4位の2時間1分48秒で昨年12月のバレンシアマラソンを制しました。2時間01分台のタイムは驚異的です。
その他のエチオピア代表は、2時間3分27秒で今年のセビリアマラソンを優勝したD.ゲレタ選手が選出されました。
そして。トラックで五輪・世界選手権で合計8個の金メダルを獲得している41歳のケネニサ・ベケレ選手が初のマラソン代表入り。
私の中ではまだ現役だったことに驚きです。全盛期は本当に強かった。
2019年に2時間01分41秒をベルリンマラソンで記録しています。マラソンでも金メダルを獲得したら偉業です。
パリオリンピック男子マラソンの見どころ
日本勢、悲願のメダル獲得は?
日本人ランナーがオリンピックのマラソンでメダルを獲得したのは1992年バルセロナオリンピック。森下広一選手(旭化成)が銀メダルを獲得して以来、メダルには手が届いていません。
2000年以降の高速化に完全に遅れる形になりました。しかし、ここ5年ほどで2時間04分・05分で走る日本人ランナーが現れ、世界との差は少しずつ縮まっています。
パリオリンピックで日本勢がメダルを獲得するには、
「粘りの走りとスパートのタイミング」がポイント。
海外勢のスピードや揺さぶりに日本勢が対抗するのは厳しいです。
そこで、30km過ぎまで先頭集団にくらいつく「粘り強さ」と戦略的な「スパート」が日本勢メダル獲得のポイントになります。20kmまでは大きな集団で進み、30kmまでに細かな揺さぶりがあると私はレース展開を予測しています。
この30kmまでに、エネルギーロスを最小限にして先頭集団にくらいつき、メダル圏内のランナーが見える位置で走れていればおもしろいです。東京オリンピックでの大迫選手のような走りがお手本になりそうです。
そして、海外勢も驚くようなスパートを仕掛け、レースの主導権を握れればメダル獲得も夢ではありません。
「速さでは勝てないけれど、粘りや戦略といった強さで勝つ」
オリンピック史上屈指の難コースは誰に味方するか?
パリオリンピック2024のマラソンコースは「オリンピック史上最大の難コース」と言われています。
最高地点は20.3km地点の183m、最大上り勾配は13.5%、最大下り勾配は13.4%。スタートからゴールまでの累積高低差(獲得標高)は438m。
引用:『パリ2024オリンピックのマラソンコース公開 歴史的建造物を巡る』
A spectacular, demanding, and unprecedented race!
Discover the official route of the #Paris2024 Olympic marathon 🔥
–
Spectaculaire, exigeant, inspirant, voici le parcours du Marathon Olympique de #Paris2024 pic.twitter.com/kLshJ4fTFG— Paris 2024 (@Paris2024) October 5, 2022
これらの数字が意味するのは?
山登りで有名な箱根駅伝5区の平均勾配は7%前後、最大勾配は10%を超えます。
最大上り勾配13.5%のパリオリンピックマラソンコースには、箱根の山登り以上の急勾配が待ち受けているようです。
15km~32kmの間にある起伏をどのように走るかが重要で、特に28.5kmから29kmの上り坂に最大勾配13.5%が待ち受けています。この辺りが勝負の分かれ目になりそうです。
多くのランナーが苦戦しそうです。
ケニアやエチオピアの選手は起伏あるコースで練習をしているので、パリオリンピックの難コースは彼らにとったらウェルカムかもしれません。
しかし、難コースだからアクシデントが起こったり、実力を発揮できなかったり、起伏を得意とするランナーが主導権を握ったりする可能性があります。
難コースが誰に味方をするか注目です!
夏のマラソンは持ちタイムより、レース当日のコンディション
「オリンピックのマラソンは、コンディションが最高のランナーが勝つ」
オリンピックに限らずですが、一発勝負はコンディションが命です。
そして、最高のコンディションとは?
①予定通りの練習を消化できた
充分に走り込みによるスタミナ強化、スピードの維持・強化を予定通りにできれば自信をもってスタートラインに立てます。
②体調不良、ケガをせずに本番を迎えられた
ランナーは肉体的にも、精神的にもギリギリの中で練習をするため、ケガのリスクはつきものです。また、体の免疫力が低下し、風邪などもひきやすい環境で練習を積んでいます。体調不良、ケガがあると走りに大きく影響するので、選手はそれらのリスクを上手に回避します。
③疲労が抜けている
ハードな練習からリカバリー(回復)できずに、疲労感を残してスタートすると最初からきついです。肉体的にも精神的にもリラックスした状態で、程よい緊張感でレースに臨めるかが重要です。
アスリートが夢見るオリンピックは人生最大のレースです。
全選手が最高のコンディションでレースに出場し、最高の走りをしてほしいですね。
マラソン史上初のオリンピック3連覇か?
有力選手でも紹介したケニア代表のキプチョゲ選手。
全盛期の走りはできなくとも、昨年2時間02分で走り、アクシデントがあった東京マラソンも2時間06分台でまとめています。他の選手になくて、キプチョゲ選手にあるのは
「オリンピックを2度勝った経験」
そして、マラソンという競技を深く愛し、極めている哲学がキプチョゲ選手の武器です。
たとえオリンピック史上最大の難コースと言われても、それを楽しむかのごとく攻略してくるでしょう。
そんなキプチョゲ選手の姿を期待しています。
有力選手がメダルを獲れないのがオリンピックのマラソン
オリンピックのマラソンはとても難しいです。暑さや一発勝負の緊張感など戦うものがたくさんあります。
オリンピックのマラソンは、タイムレースのように最初から突っ込むレースは少ないです。ほとんどのランナーが躊躇します。タイムレースに慣れているランナーが実力を発揮できない姿もオリンピックのマラソンではよく見られます。
MGCでは川内優輝選手が大逃げを実行しましたが、百戦錬磨の経験がなせる業です。
川内選手のように経験に裏づいた戦略も、大きなレースでは重要です。
人々が「あっ!」と驚くレース展開になるかもしれません。
有力選手が力を発揮できず、全くノーマークの選手が勝ってしまうのがマラソンのおもしろいところでもあります。
どんなレースになるか今から楽しみです!
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