夏のインターハイも地区大会が開催される時期になりました。
そんな時期を全く無視した記事です・・・。
今季の高校駅伝は留学生ルールが変更されます。
昨年末にわかっていたようなのですが、改めて高校駅伝の留学生ルール変更の要点をまとめました。
駅伝を応援するブログを運営していながら触れないわけにはいきませんね。
今年のニューイヤー駅伝もインターナショナル区間が変更されたように、留学生・外国人ランナーが駅伝に与える影響は大きいです。
高校駅伝では留学生ルールはどのような影響があるか解説していきます!
高校駅伝留学生ルールの変更点
高体連陸上競技専門部は2023年12月に、
「男女とも留学生が走る区間は、最短区間に限定」
という新ルールを決めました。
最短区間は男子では2区・5区、女子では3区・4区の3km区間になります。
高校駅伝留学生ルール変更の理由
【留学生ルール変更の理由1】 留学生が勝負を決定づける
これまでに留学生の破壊的な走力で勝負を決定づけた場面が高校駅伝では多く見られました。
特に2023年の女子大会では最終5区で神村学園のカリバ・カロライン選手が1分20秒差を大逆転したシーンがとても印象的で、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
一人の留学生の走力で順位が大きく変わる不公平感を感じている方も多いようです。
【留学生ルール変更の理由2】 視聴者・観客目線でつまらない
「留学生で独走態勢になった」
「すでに勝負が見えていてつまらない」
「レースの序盤で勝負が決した」
留学生ランナーの圧倒的なスピードに驚きはあるものの、視聴者は駅伝の楽しみを感じられていないようです。
駅伝の醍醐味である「ごぼう抜き」は盛り上がるシーンですが、ごぼう抜きをするランナーが留学生ランナーだと喜べない人も少なからず。
どの区間を走っても留学生には太刀打ちできないので、つまらないと感じる人もいるようです。
また、「一人の力で勝負が決まるのは個人競技で、駅伝ではない!」と疑問に思う人もいるようです。
高校駅伝の留学生ルールはこれまでも物議になりました。
高校駅伝留学生ルールの変遷
- 1993年 留学生のエントリーは2名、出場は1名に
- 2008年 留学生の最長区間の起用禁止
- 2024年 留学生の起用区間は最短距離区間
1993年のルール変更は、1993年大会(第44回大会)で仙台育英高校が男女とも留学生2名ずつを起用してアベック優勝を果たしたことがきっかけになりました。
留学生2人の出場は、今では想像できませんね。留学生2名を起用して、勝てない高校はあるのでしょうか?
1993年以降、留学生は最長区間の1区に起用されるのが主流になりました。最長区間に最速ランナーを起用すれば、その分タイムを稼げるからです。
その結果、男子の1区は留学生の区間賞が15年間続きます。
そこで、2008年には「留学生の最長区間での起用禁止」へとルール変更。
最長区間での留学生の起用を禁止したことで、2番目に長い区間での起用が主流になります。男子では3区・4区、女子では最終5区です。
しかし、別の問題が浮上します。
なんと2008~2023年の16大会のうち、男子では11大会、女子では7大会で留学生のいる高校が優勝するのです。
「留学生がいる高校は強い」
というのは視聴者の実感と結果の両方に現れており、今回のルール変更に至ります。
留学生ルール変更による影響
選手の起用方法・レースプランの変更
留学生が最短距離の区間に限定されると、2つの影響が考えられます。
1つは選手の起用方法、もう1つはレースプランの変化です。
昨年までの選手起用の主流は、
- 男子 1区 エース 3・4区 準エース
- 女子 1区 エース 5区 準エース
であり、男女共に準エース区間に留学生が起用され、勝負が決まる流れが多かったです。
そして、最短距離(=今回から留学生が走れる区間)の3kmには、トラックの800m・1500m走で活躍する中距離系のスピードランナーが出場していましたが、このあたりも変化がありそうです。
800m・1500m走をメインに取り組んでいる選手がつなぎの区間に入り、さらなる高速レースへと進化する可能性があります。
また、選手の起用方法が変化すれば、レースプランも変わります。
男子は3区、女子は5区でジャンプアップを狙って留学生を起用するレースプランが主流であり、その区間が勝負所でした。留学生を起用していた高校はレースプランの変更を余儀なくされます。
このように、留学生ルールの変更は大きな影響がありそうです。
そして、今後の高校駅伝のエース区間は何区になるのでしょうか?
エース区間は「エース+留学生のセット」
かつて高校駅伝のエース区間は男女ともに1区でした。
最長区間ですから、それなりのスタミナが求められるので「強いランナー」が集まっていました。
しかし、留学生ルールの変更にともなって、必ずしも1区がエース区間ではないという意見があります。箱根駅伝でも、「花の2区」がエース区間ではないという意見も増えてきました。
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つまり、高校駅伝では1区以外の区間の重要性が増しているのです。
また、男子・女子ともに最長区間が1区であることが、高校駅伝を難しくさせているように私は思います。
1区はどうしても集団走になるため、他の学校との差が限定的です。
しかし、レースの中盤に最長区間があれば、各校はそこにエースを投入していくでしょう。
なぜなら、エースには次の点が期待されているからです。
- 個人走で走り切れる
- 個人走でも追い上げられる
- 集団走でも競り勝てる
- ゲームチェンジャーとして流れを変える
こうした点から、最長区間が1区である限りは、男子は従来と変わらず3区、女子は2区がエース区間になると予想しています。
理由は留学生がいる高校は「留学生区間とエース区間をセット」で考えられるからです。
男子ならば「2区留学生→3区エース」、女子ならば「2区エース→3区留学生」という2区間を1つと見て、タイムを稼げます。
レースの序盤から中盤の区間であり、選手起用がピタリとハマるといい駅伝の流れになり、上位進出も可能です。
一方、留学生がいない高校も、序盤で流れに乗るためには男子は3区、女子は2区が重要になります。
ルール変更によって「留学生が走る距離が短くなった=差が開きにくくなった」と考えれば、男子3区・女子2区は重要です。
まとめ:留学生ランナーがもたらしたもの
これまで、多くの留学生ランナーが高校駅伝で活躍してきました。
私がよく覚えているのは北京オリンピック男子マラソンで金メダルを獲得するサムエル・ワンジル選手(仙台育英)、オリンピックにも出場したビダン・カロキ選手(世羅高校)です。
2人は日本の文化やマラソンをよく学び、世界で活躍しました。
そして、こうしたワールドクラスの走力がある留学生がいたからこそ、日本人ランナーもレベルアップしてきました。留学生がいるから、トップクラスの高校生ランナーは早い段階で世界レベルを体感できます。
ラスボス感のある速すぎる留学生ランナーとしのぎを削る日本人ランナーの姿も駅伝の醍醐味であると私は思います。
また、他競技の留学生ルールにも注目です。
高校バスケでも、留学生がたびたび話題にあがります。
「なぜか?」
と考えた時に、「バスケも陸上競技も、留学生の身体能力がフルに出る競技」だと思いました。
野球やサッカーなどは身体能力が高くても、テクニックが劣る場合があります。
一方、陸上競技やバスケットボールは驚異的なスピードやパワー、ジャンプ力がフルに生かされます。日本の高校生が敵わない部分が出てきてしまうので、たびたび注目されるのだと思いました。
いずれにせよ、日本の高校生も留学生もお互いにレベルアップできる環境でありたいですね。
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